ADHDで仕事を辞めたいと思ったら|判断基準と次の選択肢

「またダメだった」「もう限界かもしれない」——ADHDのある人が仕事を辞めたいと感じる瞬間の背景には、特性由来の消耗が蓄積していることが多くあります。「意志が弱い」「我慢が足りない」という問題ではなく、脳の特性と職場環境のミスマッチが積み重なった結果として、「辞めたい」という気持ちが生まれやすいとされています。

この記事では、その気持ちを否定するのでも、ただ「我慢しろ」と言うのでもなく、「今の状況は辞めるべきサインなのか、それとも一時的な消耗なのか」を整理するための視点を提供します。


ADHDが「仕事を辞めたい」と感じやすい理由

ADHDのある人が職場で消耗しやすい場面には、いくつかのパターンがあります。

同じミスで繰り返し怒られることへの蓄積

「気をつけているのにまたやってしまった」という経験が繰り返されると、自己否定感が積み重なります。ワーキングメモリや注意の調整の特性から、同じミスが起きやすい構造になっていても、職場からは「やる気がない」「ふざけている」と受け取られることがあるとされています。

怒られることへの対処法はADHDが仕事で怒られやすい理由と対策|繰り返しを断ち切る方法で整理しています。

感情・人間関係の消耗

ADHDでは感情の調整が難しく、職場での摩擦が通常より多く起きやすいことがあります。「また空気を読めなかった」「怒りを抑えられなかった」という経験が続くと、職場にいること自体が大きなストレスになりやすいです。

ADHDの感情コントロール|衝動的な言動を職場で抑える方法ADHDの職場での人間関係の困りごとと対処法もあわせてご覧ください。

「また続かなかった」という自己否定の積み重ね

転職を繰り返してきた人や、過去に何度も辞めてきた人の場合、「どうせまた同じことになる」という諦めの気持ちが先に来ることがあります。「仕事を辞めたい」という感情の奥に、「自分はどこへ行っても同じだ」という自己否定が混ざっている場合もあります。

仕事が続かないパターンの背景はADHDの仕事が続かない理由と対策で解説しています。

客先とのレビュー会議で、ある設定値について「環境に依存する値なので」と説明したところ、同じ点を何度も繰り返し突っ込まれ、うまく切り返せなかった——そういった経験をきっかけに、「それ以来、会議に出ること自体が怖くなった」という声があります。ミスや失言が直接的に批判される場面がトラウマになり、特定の状況を避けるようになるというパターンは、ADHDのある人に起きやすいとされています。


「辞めるべきサイン」と「一時的な感情」を見分ける

「辞めたい」という感情が生じたとき、それが「今すぐ動くべきサイン」なのか「一時的な消耗」なのかを判断することが、後悔しない選択につながります。

辞めることを本気で検討すべきサイン

以下に複数当てはまる場合は、現在の職場が特性と根本的に合っていない可能性があります。

特性への配慮が得られていない 上司・会社に困りごとを伝えても「努力不足」と返され、業務の調整や環境の変更が一切されない状態が続いている場合。発達障害への合理的配慮については発達障害の合理的配慮とは?職場に申請できることまとめで詳しく解説しています。

二次障害の症状が出ている 眠れない・食欲がない・朝起きられない・何もやる気が出ない——これらが数週間以上続いている場合、特性への無理な適応からうつや不安障害などの二次障害が始まっている可能性があります。二次障害のサインについては発達特性の二次障害(うつ・不安)を防ぐセルフケアで整理しています。二次障害が出ている場合は、医療機関への相談も選択肢に入れてください。

職場の構造的な問題がある 業務量が明らかに過剰・ハラスメントがある・どう頑張っても改善できない環境的な問題がある場合は、個人の工夫で解決できる範囲を超えています。

一時的な感情の可能性がある場合

以下に当てはまる場合は、環境の調整や時間の経過で状況が変わる可能性があります。

  • 繁忙期・特定のプロジェクトが終われば負荷が下がる見通しがある
  • 特定の人間関係が原因で、その関係が変わる可能性がある(異動・退職など)
  • 合理的配慮をまだ申請していない・試していない

「辞めたい気持ち」が強くても、原因が一時的なものである場合は、まず環境の調整を試みることが選択肢のひとつになります。

消耗が続いたある時期、「もうこの業界を辞めよう」と本気で思ったことがあるという声があります。気力・体力がかなり削られた状態で、二次障害のサインも出ていた。それでも踏みとどまったのは、「給料を手放す現実的なリスク」を考えたときだったといいます。「辞めたい」と「辞められない」の間で揺れながら、結局続けることを選んだ——そういった経験は珍しくないかもしれません。この「踏みとどまった理由が経済的なものだった」というケースは、転職や次の選択肢を具体的に調べることで、初めて「辞める選択肢」が現実のものになることを示しています。


辞める前に一度試してほしいこと

「辞める」と決断する前に、試せることがいくつかあります。やり切った上で辞めることで、次の選択が後悔しにくくなります。

合理的配慮を申請してみる

職場に配慮を求めることは権利であり、2024年4月から中小企業にも義務化されています。「席を静かな場所にしてほしい」「指示を口頭だけでなく文書でもらいたい」など、具体的な配慮を申請することで改善できる場合があります。申請の仕方と具体例は発達障害の合理的配慮とは?職場に申請できることまとめを参考にしてください。

休職という選択肢を知っておく

「辞める」と「休む」は別の選択肢です。体や心の消耗が激しい場合、いきなり退職するより休職して回復期間を設ける方が、次の一歩を安定して踏み出しやすくなることがあります。休職中は傷病手当金(標準報酬月額の約3分の2)を受け取れる場合があります。

「次に何を選ぶか」を先に決める

「今の職場から逃げたい」という動機だけで転職すると、次の職場でも同じ困りごとが再現されやすいとされています。「特性に合った仕事の条件」を先に整理してから動くと、選択の精度が上がります。ADHDの特性から見た仕事の向き・不向きはADHDに向いてる仕事・向かない仕事|特性から仕事を選ぶ視点で解説しています。

転職を繰り返してきた人の場合は転職を繰り返してしまう人へのキャリア戦略|ADHD・発達特性のある人の場合も先に読んでおくと、次の転職での判断軸が整理しやすくなります。


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辞めた後の選択肢

辞めることが決まった・または真剣に検討しているという段階では、次の選択肢を知っておくと動きやすくなります。

特性に合った職場へ転職する

発達障害・精神障害の転職に特化したエージェントを使うと、特性への理解がある職場を一緒に探してもらえます。一般の転職サービスと異なり、配慮事項の伝え方のサポートも受けられます。

発達障害向け転職エージェントおすすめ比較|手帳あり・なし別の選び方dodaチャレンジの評判は?発達障害の転職で使うメリット・デメリットを参考にしてください。

「辞めたい」と思ったら、まず専門家に状況を話してみることが次の一手になることがあります。

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就労移行支援で立て直してから動く

すぐに転職が難しい場合や、働き方そのものを見直したい場合は、就労移行支援を利用して「次の職場で長く働くための準備期間」を設ける方法もあります。利用中は生活費の支援を受けられる制度もあります。就労移行支援の使い方は就労移行支援とは?費用・期間・使い方をわかりやすく解説で整理しています。

フリーランス・在宅という働き方に移る

雇用されること自体が特性と合わないと感じている場合、フリーランスや在宅ワークという選択肢もあります。自分のペースで仕事量を調整できる点がADHDの特性と合うとされていますが、管理コストが増える側面もあります。発達障害のある人に向いているフリーランス・在宅ワークの始め方で始め方と注意点を解説しています。


まとめ

  • ADHDが仕事を辞めたいと感じる背景には、ミスの蓄積・感情消耗・自己否定の積み重ねがある
  • 「辞めるべきサイン」は、配慮が得られない・二次障害が出ている・構造的な職場問題がある場合
  • 「一時的な感情」の場合は、合理的配慮の申請や環境調整を試みることも選択肢
  • 辞める前に「次に何を選ぶか」の軸を決めておくと、次の選択が後悔しにくくなる

「辞めたい」という気持ちは、特性と環境が合っていないことへの正直なシグナルです。その感情を責めるより、「今の状況は何が原因か」を整理することが、次の一歩を選ぶ出発点になります。

ADHDの仕事全般の困りごとはADHDの仕事の困りごとと対策まとめで種類別にまとめています。

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この記事を書いた人:セナ

SESインフラエンジニアとして働きながら、未診断のグレーゾーンとして発達特性と向き合ってきた経験をもとに本メディアを運営。公的機関の情報をもとに、当事者視点で記事を編集しています。

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